解説>Being第19話

第19話を読んでいただきありがとうございます。

「Being」の物語を思いついた時、「自己非自己」の場面から一瞬で「アポトーシス」の場面に至っていたのに、初作のオリジナル漫画として描き始めたら第1話から第19話までの間に10年もかかっていて自分の遅筆っぷりにどん引きしてます。
第18話のタイトルを「実行(仮)」としていましたが、
正式タイトルは「アポトーシス」です。
主人公の友人ルーラ・トーデスが、自身の異常に気付いて自殺を選びました。

細胞の自殺、アポトーシス(Apoptosis)
これを初めて知ったときは非常に驚きました。
全体のために個々の細胞が死を選ぶ仕組みです。
アポトーシスにつき、おそらく一番話される例として、
「手の指の形成」があります。
胎内で我々の手は、最初は棒のようなものです。
それが次第に手の塊となり、部分的に薄くなり、
水かきのついた手の形となり、
次に水かきの部分が消えていき、5本の指となる。

5本の指が離れているのは、その間にいた細胞たちが「プログラムされた死」を実行したからこそ……すごい。
(参考イメージとして:桜映画社 ホーム > 作品カタログ > 科学・技術:ライフサイエンス>アポトーシス

最近読んで感動した本によりますと、
細胞にとって「死」は「生」と同じくらい重要であり、必須の機能。
( ジャック・チャロナー著「ビジュアルでわかる細胞の世界」東京書籍)
多細胞生物にとって、個体をよりよく維持するために「細胞の死」も、必要な仕組みなんですよね…  深い、深すぎる。
人生もう一つあるならアポトーシスを研究したかった。



クラインがハリソンや他の特警と連絡を取り合ってる場面です。
鳥のような形をしているのは「連絡物質」でもあるサイトカイン。
サイトカインは、細胞同士の連絡や、
細胞の分化・攻撃開始・攻撃力強化等の機能をもちます。

主人公のレインは、自己=味方への攻撃を制御する役割も担うので、
軍の攻撃行動は監視しようとします。

制御官は攻撃を制御する…ということで「血の臭いが苦手」という設定にしてあります。(参照:第9話、小説第29話


物語では、指揮官であるハリソンが、制御官であるレインを部屋に閉じ込めて、自分たちが「敵」を攻撃するのを抑制しないようにしています。
が、現実の人体で、ヘルパーT細胞が制御性T細胞をどうにかするようなことはありません(多分)。
これは細胞を擬人化した際に生じたエピソードです。

今回の話で描きたかった主題は、
「がん細胞も『自己=同朋』という存在beingであること」
「制御性T細胞は、免疫反応(攻撃)を抑制する存在beingであること」です。

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