解説>Being第20話「手帳」

平成の間に最終回まで描くつもりが……あと5話以上残ってる! 

小説版では第37話「セントラル訓練校」で登場していますが、漫画本編では初登場、 クラインの彼女です。名前はキア。 

名前の由来は
killer-cell immunoglobulin-like receptor(KIR)
キラー細胞免疫グロブリン様受容体 」です。
ナチュラルキラー細胞や一部のT細胞の表面にある「HLA クラス I 分子を認識する受容体群」。

キールロワイヤル(KIR ROYAL)の感覚で、プロット段階でずっと「キール」と呼んでいたのですが、キアだった。キール読みはフランス語かな… 


リガンドと顔をそっくりにしたのは、NK細胞とCTLが似ているから…という理由です。 
(CTL:cytotoxic t lymphocytes細胞傷害性T細胞。キラーT細胞、Tc細胞ともいう。呼び名がいっぱい!)
実際、NK細胞とCTLの見分けポイントは、T細胞特有の表面タンパク質CD3の有無だけみたいです(あるのがCTL、ないのがNK)。
(参考文献「エッセンシャル免疫学第3版」) 

ちなみに漫画本編第4話では、主役のレインがリガンドの戦いを見て「クラインと似てる」と感想を述べています。 
つまり、NKT細胞、NK細胞、CTLが色々似てるんですよね。

NKT細胞は、NK細胞とT細胞の機能を併せ持ち、免疫の制御もこなし、自然免疫から獲得免疫への架橋も担うので、作中では「全軍指揮官」としての任も兼ねています。 

この細胞、設定盛りすぎチートじゃない?って思いながら、作中でも設定盛りました(笑) 

細胞傷害性をもつ細胞(キラー)は、標的細胞が一定基準を満たした場合にのみ、強く結合して毒素を細胞内部に直接叩きこんで細胞を殺傷します。 

NK細胞CTLとで、がん細胞などの異常細胞を攻撃対象として認識する基準が異なります。 

また、がん細胞はいびつな存在でもあるため、それが増殖しても、同じ「特徴」を必ず備えているとは限りません。
(適応免疫であるCTLに、あるがん細胞の「特徴」を教えて徹底的に攻撃させる治療法がありますが、この場合、その特徴をもたないがん細胞は攻撃しません)
 ※あまり正確な説明ではありません。ご了承ください。

★オリジナル設定★
これはクラインが指揮官権限で、攻撃官に攻撃を許可している場面です。漫画でうまく表現できたら…と思いつつ、難しい……
白い使羽は「攻撃許可」、黒い使羽は「攻撃禁止」。
攻撃官のサーベルの鞘は黒く、白い使羽が触れて制御を解除するようなイメージです。
攻撃許可……細胞的な説明で言えば「活性化」されて、攻撃モードになると、鞘はなくなってしまうわけです。
それくらい「攻撃モード」は危険でもある。
だからこそですかね、T細胞は活性化すると同時に、自殺スイッチを自らの表面に用意し、攻撃を終わらせる準備もしているようです。
(参考文献「休み時間の免疫学 第3版」)

★オリジナル設定★
クラインの名前の由来の1つでもありますが、
クラインは自身の攻撃力を高め(オートクライン※)、他の攻撃官の攻撃力も高めることができます。その場面がこれ↑
※オートクライン(autocrine自己分泌、オートクリン): 分泌された物質が分泌した細胞自身に作用すること

NKTとCTLの併用療法についてのレポートを読んで、擬人化妄想で非常に萌えたので、共闘を描きたくて、準主役であるクラインにリガンドというバディを用意しました。 
二人の関係については小説版で詳細に書いています。 

(漫画本編で描くと、主役や話の本筋がぼやけてしまうので) 

がんの治療において、免疫を制御する制御性T細胞は少し厄介な存在です。 

がん細胞が制御性T細胞を利用するといった現象もあるとか。 

これはファンタジー物語ですので、主役のレインに「今回は制御しない!」と啖呵きってもらいましたが、今のところ人体ではこういう展開はないようです。 
ただ、制御性T細胞が一定の条件下でヘルパーT細胞に変じる?ことがあるらしいので(ヘルパーT細胞がCTLに変じる?こともあるらしい)、 
今後の研究に期待したく(笑) 

この「首謀者」というのは、がん幹細胞のことです。

第21話は今年度中にUPしたい……! 

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