第19.5話 リード

※注意※
性的表現(BL)が多数含まれます

誘い方が少し強引だったと思いつつも、クラインはそれを少し手探りで始めた。
やり方は知ってる。経験は、片手で収まるけれど、ある。

自分から抱いたことは無い、でも抱かれたことがあるから……セントラルで、先輩に。 

リガンドを抱き寄せて、唇を重ね、舌を滑り込ませる。 

「……ん」 

最初は、記憶をたどって、自分がされていたことを真似るように意識していたが、リガンドから漏れる声と吐息で、次第にどうでもよくなってくる。
やりたいようにやったらできる気がする。
本人にとても言えないが、魘されてるときの喘ぎ声で結構キテしまったので、実はあんまり余裕がない。

とはいえ、一応自分が年上だし、こっちから誘ったのだから余裕は見せておきたい……
焦りを抑え、キスをしたり撫でたりしながら、ゆっくりとリガンドのシャツのボタンを外して、ベッドに押し倒す…… 

押し倒してから気付く、これだと下を脱がしにくいよな???
そりゃ、引っ張ればなんとかなるけど、あまり手間取るのは格好がつかない。
先輩はどうしてたっけ?
俺、自分では脱いでなかった気がする……気付いたら脱がされてたよな……? けっこうスムーズに。たぶん。そんな細かいとこは覚えてないな…

少しだけ焦って、身体を撫でながら服に手を突っ込んだところで止まる。と、リガンドが腕を回し抱きつく形でリガンドの体が少し浮いた。 

その隙に下着ごと膝まで引きずり降ろし、自分に寄せられた両膝を一度抱える形で最後まで降ろした。……よし。
リガンドも怖がってないみたいだし。 

おおよそ順調に進めながら、今度は、挿れる前にどの程度慣らしておいた方がいいのかがわからなくなってくる。
先輩は「そろそろいける」とか言ってから挿れてきたけど、その「そろそろ」の見極めはどうやるんだ?
試してみてダメとかあるんだろうか?それでやり直しって格好つかなさすぎだろ?
キツくても結構入るもんだって先輩が言ってたけど……
いやいや、無理やりだと可哀想だろ。流石に。

ごちゃごちゃ考えながらも、少しずつ考える余裕が失せてくる。
声が…耳のすぐ傍で聞こえる声がやばい。

自分の準備はほぼ万端だと思う、でもリガンドは?いけるか?

少し迷って、様子を伺おうとして気付く。

いける気がする。

好きなように触ったりキスをしたりを繰り返しているうちに、やりやすい体勢になっていた。
指を引き抜いてからあてがうと、自分の背に回されたリガンドの腕に力がこもり、引き寄せられる形になった。それも利用して腰を掴んで一気に挿入する。 

「……ッふ、あ」 

リガンドの腕が少し緩んで上体が離れ、リガンドの熱を帯びた表情が見える。
デスクライトしか点けていないから、暗くてよく見えない。物足りなく思いながら、頬を撫でた。 

「…大丈夫?」 

自分の息が少し荒くなっているのをできるだけ抑えて、リガンドに声をかけた。
大丈夫じゃないと言われても止められる自信はまったくなかったけど。
ここで一言かけられただけでも自分の理性を褒めてやりたい。

リガンドが小さく頷くのを見届けて、そこから後は思考にサヨナラ。
もう、勢いに任せる。 



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なんとかなると思っていたけど、なるもんだ。 

抑えながらゆっくりと息を吐いて、吸い、弾んだ息を整える。 

「後は俺がやるから寝てて」と余裕を見せつけて後始末をしながら、枕に顔をうずめたリガンドの肩に毛布をひっかけてやる。

訓練でのタイミングも合ってるし、もしかしてこっちの方の相性もいいんじゃないか? 

これでリガンドの……えぇと、…誰かに触られると警戒し過ぎる…のが治るなら一石二鳥だ。 

機嫌良く服を整えて、既に寝息を立てているリガンドの隣に寝転がり、しばらく顔を覗き込み、髪を撫でる。 

「…………」 

初めてだったけどうまくいった、と満足しながら、よかったところを思い返しているうちに、何かに思い当たった。起き上がって、両手で数を数える。 

「……俺が拾った日が多分リガンドの初回だろ、で、この前…週2日、あいつらにやられてたのが1ヶ月くらい続いて…?しかも毎回3人だから?」 

時間をかけて計算して、リガンドを見る。 

服を脱がせるときもそうだったけど、それ以外のときも、リガンドが……うまく動いてくれていたような気がする。 

「………」 

年上として手慣れた感じを演出したつもりが、不慣れなことに気付かれて、逆にリードされてた……?

 

じっと、リガンドの寝顔を眺める。

やっぱり顔が好みだ……本当にあの日、あそこ散歩してよかった…

「まぁ…うまくできたから……いいだろ」 

再び毛布に潜り込み、熟睡しているリガンドを抱えるように抱き寄せて、
心地のよい疲労感と共にクラインは眠りに落ちていった。 

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