第24話 一日

だいたい、朝5時くらいに目が覚める。
すぐには起き上がらず、しばらくの間、隣で眠っているリガンドを眺めて過ごす。
ベッドから降りて、着替えて、(……最近気付いたのだが、後で起きたリガンドが、自分の脱ぎ捨てた服を綺麗に畳んでくれていた)
そして、机に向かう。
自分が寝ている間に、ハインツが「今日の予定」と「課題」を机に並べてくれている。 

「ハインツもリガンドも律儀だよなぁ……」 

課題を手に取り、そして枚数を確かめてから呻く。
リガンドが起きるまでの間、指定された順番通りに課題を少しだけこなし、
リガンドが起きたら席を立ち、リガンドにしばらく絡みついて頭の疲れを癒す。 

最初は、突然抱きついてもリガンドが過剰な反応をしないかを確かめるのが目的だった。 でも、今となっては完全に「自分が触りたいから触る」になってしまっている。
けれど、リガンドが嫌がるそぶりも見せないから、好きに触っても構わないだろう、ということで。 

ハインツとは学食で合流して、食べ終えたらリガンドは授業へ。
自分は指定の授業があれば授業へ、空き時間なら自室でのハインツによる授業だ。 

セントラルにいた頃は、座学なんて「居眠りを我慢して目を開け続ける訓練」に過ぎなかった。今も、指揮官コースや制御官コースの授業に出席しながらその訓練を続行してるけど。 

本当にハインツは頭がいいのだろうと思う。
色々と工夫をして自分に勉強を教えて、「絶対に留年させない」と宣言してくれている。 
下心というか、俺のことが好きだからって、そこまでやるか?って位に熱心で。 

俺が編入生だからなのか、エリート校の候補生は人見知りするのか、授業で一緒になる他コースの候補生たちとは会話のきっかけもつかめなくて。孤立しているときに、ハインツがふらふらと自分に近寄ってきてくれたのは、助かった。 

これで顔が好みだったら、ハインツが望んでいるだろう展開もアリだったんだけど。 

いい顔してると思うよ、でも好みじゃない。対象外。 

「……どうかしたか?」
「……別に」 

夕方に、リガンドが合流する。 

正直、すぐにでも抱きたい。本当に顔が好み直球。すこし華奢なのもいい。
課業時間が8時半から16時半で、朝も夜も課題で、
ぶっちゃけ、娯楽がそういうことしかない。 

課業時間外は、訓練場が空いている時間に合わせて、リガンドとの実技自主練を夕方にやったり、少し遅い時間にやったり。大体1~2時間。
あとは、夕食やシャワー、そして課題課題課題……。 

士官学校って何が楽しくて存在してるんだよ、つまらなさすぎだろ!!! 

「ハインツとリガンドがいなければ絶対に俺、潰れてたな」
「…え?何?」
隣に並んで課題をこなしていたリガンドがこちらを見る。
考え事の筈が、言葉に出していたらしいが、気にするようなことでもない。 

「いやでももう無理、これ全然わかんない!」
ペンを投げ出して隣のリガンドにしがみつく。
「わっ」
「どの辺だ?どこまでは分かる?」
ハインツが身を乗り出して尋ねてくるのを横目に、リガンドに頬ずりしてから、うなじに顔を埋める。
「無理ぃ~……リガンド、いいにおいがする」
「え……別に何もつけてないよ」
「リガンドは構わずに課題を続けろ」
「え、ええええ…この状態で?」
「ぜんぜんわかんない無理無理!」 

まぁ、3人で喋って過ごすのも楽しいけど。 

わるくない、たぶん。最近は。 

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